△or□?



おもしろくない…

ここ数日、イライラしてばかりな気がする…

「「チッ…」」

2か所で同時に舌打ちが聞こえた。

音の出所はテーブルの両端。

お互いに身体は反対方向を向けたまま、顔だけ同じ方向に向けている2人がいる。

2人の視線の先には1人の男と1体のロボットのようなもの。

「もういいっていってるだろ?オレにばかり構うなよ…」

そう言っているのは、明石暁。
ボウケンレッドであり、ここのチーフでもある彼は、責任感も強く、頼れるリーダーだ。

しかし、そんな彼が、今1体のロボットに振り回されている。

「ズバーン!ズバーン!」

そう言いながら、明石を追いまわしているのは大剣人ズバーン。
古代レムリアのプレシャスであった剣がロボットに変身した姿なのだ。



「わかった、わかった。でも、肩揉みははもういいから。ありがとう、ズバーン」
そう言ってにっこり微笑む明石を見てズバーンは
「ズバ、ズバ♪」
と、嬉しそうに明石に背後から抱きついた。


「「チッ」」

そんな明石とズバーンを見ながら、真墨と映士はまた同時に舌打ちした。

「「面白くねぇ…」」
「「んっ!?」」

同時につぶやいたお互いの言葉に、2人は顔を見合わせた。

「何だよ、銀色」
「そっちこそ何だ、黒いの」

「「……ふんっ!」」

イライラしているためか、いつにもまして2人の間にトゲトゲしい空気が流れている。

「大体、アイツは元は剣だろ?何で明石にあんなに付きまとってんだ?」
「大剣人だか何だか知らねぇけど、べたべたし過ぎだろ。明石だって迷惑してんじゃねぇか」

「「んっ!?」」

お互い耳にした相手の言葉に思わず反応する。

「お前もそう思うのか、銀色?」
「珍しく気が合うじゃねぇか、黒いの?」


「アイツにはびしっと一度言ってやらないとな」
「そうそう、“後輩"としての立場をはっきりさせとかないとな」


2人は顔を見合わせてにやりと笑う。

「行くぜ、映士!」
「おう、真墨!」



「ありがとうな、ズバーン」
「ズバズバ♪」

肩揉みのお礼にズバーンの頭を撫でている明石の前にさっと影がさす。

「どうした?」
「ズバ?」

「いや、ちょっとズバーンに用が」
「そうそう、ちょっとこっち来いよ」


2人はズバーンを部屋の隅へと連れて行った。



「いいか、ズバーン。明石にあまり付きまとうんじゃないぞ?」
「そうそう、アイツは忙しいんだ。明石だって迷惑してるだろ?」
「ズバーン…」

2人の言葉に、ズバーンは頭を垂れた。

「そうそう、分かればいいんだよ」
「お前の面倒は、これからはこの真墨が見てくれるんだから、そっちに行けよ」
「はぁ?ちょっと待て!それはお前の仕事だろ?お前のすぐ下の新入りなんだから、お前が面倒見ろよ!!!」
「何?そういうのは古株の役目だろ?オレ様は忙しいんだ、そんなことまでできるか!!!」

さっきまでの仲の良さはどこへやら。
だんだん、辺りには嫌〜な空気が流れてきた。

「大体、お前はただ明石に気に入られたいだけだろ?」
「何を!?それはこっちのセリフだ、黒いの!」
「やるか?銀色!」

二人が胸倉をつかみ合って、顔を寄せた時だった。

ズバーンの胸の宝石が、青から黒へと変わった。



「ズバーン!!!!!!」

ガシャーン!!!



大きなズバーンの声の後に、何かがぶつかって倒れる音が部屋に響いた。

「何だ!?」
「どうしたんですか!?」

集まった他のメンバーが目にしたものは、壁に叩きつけられて折り重なるように倒れている真墨と映士の姿だった。


「まったく…あれほどズバーンの前で喧嘩をしてはいけないと言ったのに…」
「ホントホント」

やれやれといった表情で2人を見つめるさくらと蒼太。

その横に立つ明石の姿を見ると、ズバーンはすぐさま駆け寄った。 「ズバーン!?」
「どうしたんだ、ズバーン?」

明石はしがみついたズバーンの頭を優しく撫でる。

「真墨、映士、ズバーンは大切なオレ達の仲間なんだぞ?大丈夫か、ズバーン?」
「ズバズバ♪」

真墨と映士はばつが悪そうに、ズバーンを見る。


「ズバズバ」
「よしよし、ズバーン」

明石にしがみつきながら、ズバーンはちらりと2人を見た。

表情が無いはずのズバーンの顔に、真墨と映士には確かに、勝ち誇ったような笑顔が見えた。

「くっそー」
「アイツ…覚えてろ…」



「あ〜あ、そんな敵意剥き出しだと、またズバーンに怒られちゃうよ?皆で仲良くしないとね☆」

奈月の言葉は果たして聞こえているのか…

2人と1体によるチーフ争奪戦はまだまだ続きそうである。