シャンプー


「あっち〜」
だんだんと日差しがきつくなってきた。
夏がもうすぐそこまで来ている。

「お帰りなさい、ハボック少尉。市中巡察ご苦労様」
「いや〜暑くなりましたね〜」

オレは部屋の隅に置かれた冷蔵庫から冷たいお茶を取り出してグラスに注いだ。
巡察の後の冷たいお茶は美味い!
まぁ、これがビールだったら言うこと無いんだけどな…

「少尉、それを飲んでからでいいから、ちょっと手伝ってくれないかしら?」
「いいっすよ」
返事をしてグラスの中に残っていたお茶を一気に飲み干した。


『この書類を大佐のところへ届けて欲しいの』

いつもなら中尉が自分で行くところを、なぜか今日はオレに頼んできた。
大佐と喧嘩でもしたんだろうか?

『あぁ、それが済んだら、今日はもう上がっていいわよ』

そう言って意味ありげに微笑む中尉の姿を思い出しながら、オレは大佐の執務室へ向かった。

コンコン

「失礼しま〜す」

「あ〜少尉!」
「ちっ、もう戻ってきたのか…つまらん」

ん?この声…
声のするほうに目をやると、そこには黒いズボンに赤いコート、金色のみつ編みの小さな少年の姿が…

「えっ、鋼の大将!?いつきたの?」
「うん、報告書の提出にさっき着いたばっかなんだ〜」

そうか、中尉がさっき意味ありげに微笑んだのはこいつのことだったのか…

「おいハボック。さっさと手にもってる書類を置いてこのチビを連れて行け」
「誰が超ハイパー豆粒どチビじゃ〜!!!」
「まぁまぁ…」

オレは暴れるエドを抱えるようにして執務室を出た。


中尉のお言葉に甘えて、今日は残業なし。
久々ゆっくり出来そうだ。

「久しぶりだな、エド」
「そうだな〜2ヶ月ぶりかな」
「アルは?」
「宿にいる。ちゃんと少尉のとこ行くって言ってきたから…」
「そっか…」

お互いの近況を報告しながら、オレたちは近所のスーパーへ向かう。

「何が食べたい?」
「う〜ん…少尉の作るもんならなんでもいいよ」

くぅ〜可愛いこと言ってくれるじゃないか!!!

ジャガイモ、にんじん、たまねぎ、鶏肉…今日はエドの好きなクリームシチューにしよう。

「あっ、もしかして今日シチュー?」
「おう!」
「やった〜!少尉のシチューは天下一品だからな☆」

あ〜もうオレ、これだけでお腹いっぱいっす…


がちゃ

「さぁ、どうぞ」
「ただいま〜」

エドはここへ来ると「ただいま」と言ってくれる。

彼らは旅に出る前に、彼らの家を焼いてしまった。
帰るところはもうない…それが彼らの覚悟。

だからなおさら、その言葉が嬉しい。
ここがアイツが帰る場所って思ってくれるんなら…


野菜を切って、肉と炒めて鍋に入れる。
水を加えたら後は煮込むだけ。

「もうちょっと時間掛かるから、お前シャワーでも浴びてろ。旅から帰ったばっかなんだろ?」
「サンキュー少尉。もう埃っぽくってさ〜」

シャワー室へ向かうエドを見送りながら、オレは煙草に火をつける。

アイツが出てくる頃には、シチューがいい具合に出来上がっているだろう。

ところが、いつまで待ってもシャワーの音が聞こえてこない。

どうしたんだ?
まさか倒れたりしてるんじゃ…

「おい、エド、大丈夫か?」

「あっ、うん…」
ドアを叩くと中から返事があった。

「どうした?」
「いや…ちょっと…」

なんだ?どうしたんだ?

「悪いエド、開けるぞ?」
「うわ、ちょっと待って!」

返事を待たずにオレはドアを開けた。
そこには上着だけ脱いだエドの姿があった。

「なんだ、どうしたんだよ」
「いや…実は…昨日派手に一戦やりあっちゃって…」

機械鎧に目をやると、大きな傷がある。

「で、ちょっと機械鎧壊れちゃって…右手が上手く動かないんだよね…」
「まったく、あれほど危ないことやるなって言ったのに…」
「ごめん、少尉…」

上目遣いに謝るエドの顔を見ると、いつもこれ以上怒れないんだよな…

「仕方ねぇな…片手じゃうまくできないんだろ?」
「えっ、ちょっと、少尉!?」
「いいからじっとしてろよ」

しゃがんでシャツのボタンをはずしてやる。

「面倒だから、オレも一緒に入ろうかな…」
「えっ!?」
「だって、片手じゃ髪も上手く洗えないだろ?」
「うっ…」


広いとはいえないバスルームだが、小柄なエドとなら何とか2人入ることが出来る。
「小柄」ってのは禁句だけどな…

「ホレ、頭出せよ」
エドの頭にシャワーをかける。
「熱くねぇか?」
「うん、丁度いいよ」

シャンプーを手にとってエドの髪を洗う。

うっかり力をいれ過ぎないように、慎重に。

オレのツンツンで堅い髪と比べて、エドの髪は真っ直ぐで、細くやわらかい。

「綺麗な髪だな…」

細かく泡立ったシャンプーが金色の髪を優しく包む。

「少尉に髪洗ってもらうの…気持ちいい…」
「髪くらい、いつでも洗ってやるよ」

シャワーでシャンプーを洗い流す。

「ホレ、終了」
「ありがとう、少尉」
振り返ってエドがにっこり笑った。

やべっ、なんて可愛いんだコイツ…

洗い髪とピンクに染まったほっぺた…
これはもう犯罪だろ!

「エド、悪ぃ。もうオレ我慢できないわ…」

後ろからエドをぎゅっと抱きしめる。
振り向いているエドにそのままキス。

やわらけぇ…

「んっ、もう、少尉…」

エドの甘い声が気持ちいい。

シャンプーの隣に置いてあるボディーソープを手にとって泡立てると、そのままエドの身体を泡で包む。

「ちょっと、少尉…っ、くすぐった…んっ」
「ほら、エド、じっとしてろよ…」

そう言いながら後ろから手を伸ばし、ツンととがったエドの胸の先端をキュっとつまんだ。
「んっ!」
そのまま首筋にキスして、唇を耳の後ろへと動かす。
耳の後ろを舐めてやると、エドの声はもっと高くなった。

左手でエドを抱きしめたまま、右手で泡をすくって背中に乗せる。
エドの背中には無数の傷跡がある。
もう、完全に治っているもの、まだ赤みがかったもの。
コイツの背負っているものの重さを表しているようで、オレはいつも居たたまれなくなる。

少しでも負担にならないように、傷の一つ一つを優しく撫でる。

エドの声が一段と高くなる。

コイツのこの声が俺にとっては媚薬のようなもの。
バスルームに立ち込める湯気と、甘い声にのぼせてきそうだ。

「しょうぃ…オレもう…限界…」

赤く上気したエドの振り返った顔を見た瞬間、オレにも我慢の限界がやってきた。
エドを抱え上げ、向かい合わせに座らせる。

「行くぞ…?」

エドが小さくうなずいたのを合図に、オレは一気にエドの中へ入った。

「あぁっ!!!」
エドの中がきゅっと締め付ける。
大きくのけぞったエドを抱きとめ、ゆっくりと動く。

「しょうぃ…」

久しぶりだからきついのか、ぎゅっと閉じた瞳の端に涙が浮ぶ。
それを唇でそっと拭うと、そのまま半分開いた唇にキスした。

「オレ…もうダ…メ…」

そう言って最高に甘い声をあげたエドともに、オレも限界を突破した。



「あ〜のぼせたかも…」
そう言いながら、ソファーでぐったりしているエドに冷たいオレンジジュースを差し出しながら、缶ビールをぐっと飲んだ。
最高に幸せな瞬間。

「運動したら腹減っただろ?メシできてるぞ」
「やった〜!もう腹ペコ!!!」

明るく笑うエドの顔を観てるとこっちも自然と笑ってる。

コイツがここにいてくれるのが、オレにとっての一番の幸せな瞬間…





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