りょーかいっ




コンコン

ドアがノックされ、ハボックは読んでいた新聞から顔を上げた。

時刻はそろそろ日付も変わろうかという頃。

こんな遅くに突然訪ねてくる知人などそう多くは無い。

新聞を放り投げると、ハボックはドアへと急いだ。

「少尉っ!」

ドアを開けると、見慣れた少年が立っていた。

いつもと同じ黒い服に赤いコート姿。

ただ、頭の上には見慣れぬ黒いとんがり帽子が乗っかっている。

「どうしたんだ、エド…こんな夜遅く…」

「さっき、こっちに着いたんだ。時間遅くて、宿とか探すの面倒でさ…アルは大佐のとこだけど、2人も押しかけちゃまずいだろ?だからさ…」

一秒でも早く少尉に逢いたくて…
ホントはそう言いたいけど、なかなか素直に言えない。

照れ隠しで必死に説明しようとしているエドを、ハボックはいつも可愛らしいと思うのだった。

「まぁ、あがれよ」
「お邪魔しま〜す」

秋もどんどん深まってきたこの頃。

夜になれば、かなり冷え込むようになった。

夜道を歩いてきて、冷え切ったエドに、ハボックはココアをつくった。

ミルクたっぷりの甘いココア…

「ありがとう、少尉…はぁ…旨い…」

冷たい手を温めるようにカップを抱えると、エドはホッとした笑顔を見せた。

「牛乳は嫌いだけど、ココアに入れたら何でこんなに旨いんだろう…」

エドの独り言を耳にしてこっそり笑うと、ハボックは自分のコーヒーをいれた。

ハボック自身は甘党ではないので、ココアなんて滅多に飲まない。

お菓子も自分で買って食べたりはしない。

そんなハボックの部屋にある甘いココアは、エド専用なのだ。



「ところで、その帽子どうしたんだ?」

落ち着いたところで、ハボックはエドの隣においてある黒いとんがり帽子を指差した。

エドがやってきたときからずっと気になっていたのだ。

「あぁ、これ?いいだろ〜!一昨日立ち寄った街で、店が大風で壊れて困ってたお菓子屋さんがいてさ。錬金術で直したら、お礼にってくれたんだ』

「ふ〜ん…で、なんでお菓子屋がとんがり帽子なわけ?」

「ほら、もうすぐハロウィーンだろ?」

あぁ…そういえば…
このところの忙しさですっかり忘れていた。
軍にも毎年、近所の幼稚園の子供たちが仮装してやって来ていたっけ…。

タバコをふかしながら、ハボックはボーっと考えていた。

よほどその帽子が気に入ったのか、エドは自慢げにかぶってみせた。

「どう?似合う?」

「あぁ…気に入ってるのか?」

「うん。錬金術って、ぱっと見、魔法みたいだし…それに、これかぶれば少しは背が高く見えるし…

どちらかというと、後者の方が大きな理由のようだが、あえてハボックはそこには触れなかった。



「ところでさ、少尉?」

「ん?」

「Trick or Treat!!!」

「はっ!?」

「ハロウィーンだろ?ほら、『Trick or Treat!!!』」

先程も述べたように、ハボックは甘いものが好きではない。
よって、ハボックの部屋には、甘いキャンディーもチョコレートも存在しないのだ。

「あ〜…今さ、お菓子ないんだよね…」

「え〜!!!じゃあ、もういたずらしかないな…」

エドはニヤリと笑うと、じりじりとハボックの方へにじり寄ってくる。

「おい、ちょっと待て!」
「ダメ〜お菓子くれなきゃいたずらするぞ!」



「だったら…」



先に動いたのはハボックだった。

くわえていたタバコを灰皿に置くと、さっとエドの腕をつかみ、動けないように後でねじ上げる。

「なっ!?」

講義しようと開いたエドの口を、自分のそれで塞ぐ。

「んっ…ふっ…」

逃げようとするエドを捕まえようとするかのように、ハボックは舌を動かして、エドの舌をからめ取る。

すっとエドの体から力が抜けるのがわかった。

その一瞬を逃さず、ハボックは上着の裾からエドの身体へと手を伸ばす。

背中、胸、腰…

動かすたびに、エドの呼吸は荒くなり、頬が赤く染まっていくのがわかる。



「どうした、エド?これでもまだ、お菓子の方がいい?」

やっと唇を離したハボックは、自分の唇をぺろりとなめ取ると、意地悪そうにそう言った。

さっきまでとは立場が逆転して、エドはむすっとしている。

「何で少尉がいたずらするんだよ…」

「やられる前にやれってね。で、どっちがいい?」



「………じゃあ……いたずら……///」

「りょーかいっ!」



灰皿に置かれたままになっていたタバコをもみ消し、ひょいっとエドを抱えてベッドへ向かう。

ハボックの部屋のベッドはお世辞にも大きいとは言えない。

ギシギシとスプリングが軋む。



冷たい秋風が窓の外を吹いている。

部屋の中の温度もそれほど高くはない。

だけど、なんでオレの身体はこんなに熱いんだろう…

少尉が触れるたびに、その場所がジンとしびれる。

感覚が無いはずの右手にも、少尉の体温を感じる。



「エド…お前、痩せた?」

「そうかな?」



もともと小柄な方だけど、なんだかいつもよりもさらに小さく感じる。

きつい旅なんだ…

オレには代わってやることができない…

オレがあいつに与えてやれるのは、この身くらいしかないんだ…



少しでもエドが苦しくないように、ハボックは優しく愛撫する。

エドの昂りに手をやると、エドの身体がビクンと大きく跳ねる。

限界が近いのかもしれない…

そういう、ハボック自身も、自ら発する熱があふれ出しそうだった。



「エド…いいか?」

「んっ…しょ…い」



エドの中は、ハボック自身よりもずっと熱かった。

油断すると、一気にいってしまいそうになるのを我慢して、ハボックはゆっくりと動く。

「あっ…んっ…っ……」

途切れ途切れに聞こえるエドの声が、ハボックを益々刺激する。


「ヤバっ…もう無理…」


一気に力が抜けていくのがわかった。

それと同時に、エドの高い声が聞こえた。





旅の疲れもあったのか、エドはハボックの腕の中でぐっすりと眠っている。

2人でぎりぎりのベッドからエドが落ちたりしないように、寒くないように、ハボックはその小さな身体をしっかりと抱いた。

月明かりの中に、テーブルの上に置かれた黒いとんがり帽子が見える。



結局、甘いご褒美をもらったのは、自分のほうかもしれないな…



たまには甘いのも悪くは無い…

ハボックはそっと眼を閉じた…





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