花一輪RizaVer.
そんな大事なこと、忘れるわけない。
今日は貴方の誕生日。
1ヶ月も前から、プレゼントをどうしようか考えていたわ。
でも、考えれば考えるほど、心は曇ってゆく。
きっと貴方は、また山ほどのプレゼントをもらうでしょ?
色とりどりの包み紙でくるまれたプレゼントたちはまるでカラフルなキャンディー。
そして、それらを贈る彼女たちはふわふわのドレスに、きらきら光る宝石を身に付けたお姫様たち。
あんなに綺麗な人たちにプレゼントをもらうのなら、今更私のなんて…。
結局、今日になってもプレゼントは決まらなかった。
いつもの道をいつもの時間、司令部へ向かって歩いていると、いつもの違うものが目に入った。
数日前まで空家だった角の建物に花が溢れている。
「いらっしゃい!本日開店、どうぞ見ていってください!!」
あぁ、ここ、花屋さんになったのね。
咲き誇る花々と甘い香りに誘われて、私は店を覗いてみた。
「いらっしゃい!何かお探しですか?開店記念にサービスしますよ?」
「あ、いえ…」
さっきまで通りで声をかけていた人…ここの奥さんかしら?
「お部屋に飾るのかしら?それとも、誰かへのプレゼント?」
「あっ…えっと…その…」
「人気があるのはやっぱりバラね。でも、こっちのも結構売れてるのよ〜」
奥さんはもう、プレゼント用と勝手に決めて花を選び始めている。
プレゼントか…あの人に花なんて…
「あとこれ、珍しいのよ!まだこっちには余り出回って無くてね。アスフォデリンって言うんだけどね。
この花言葉がまた素敵なの。『私はあなたのもの』。一度は言われてみたいセリフよね〜」
『私はあなたのもの』
私の命はあなたを守るため。
私が貴方に捧げられるのは、この身だけなのかもしれない…
でも、もし私が貴方にこの言葉を言ったら、貴方はどうするかしら?
きっと、また調子に乗るに決まってるわ。
結局、奥さんの勢いに負けて、その花を買うことにした。
まだこっちでは珍しい花だって言ってたし、どうせ錬金術とデートのことで頭がいっぱいの貴方は花言葉なんて知らないでしょう。
そんな軽い気持ちだったのに、まさかこんなことになるなんて…。
「おや、ここの料理はお気に召さないかね?」
「いえ…とても美味しいです…」
手の込んだ豪華な料理に、美味しいお酒が並ぶ高級レストラン。
どうして私、こんなところにいるんだろう…。
「そうかね?せっかく君に似合うドレスを選んだんだ。君の美しい笑顔を見せてくれないかね?」
「ですが、こんな綺麗な服、私には…」
ふわふわとしたピンクのドレスに、おそろいのミュール、首にはシンプルなシルバーのネックレス。
これらはここに来る前に、彼が見立てたもの。
「今日は貴方の誕生日なんですから、私がプレゼントをもらって、ご馳走してもらっては意味がありません!」
「いいのだよ。私はもうプレゼントをもらったのだからね。今はそのプレゼントを楽しんでいるのさ」
「っ、ですから、アレはそういう意味では///」
「ふふふ、照れなくてもいいのだよ」
本当に…どうしてこんなことになってしまったのかしら…
「さて、そろそろ行くとしようか」
貴方の言葉に促され、私たちは店を出た。
もう夜も遅い時間、通りには人もまばらだった。
貴方は当然のように私の手を取り歩き出す。
軽いドレスの裾が、歩くたびにふわふわと揺れる。
まるで、あの『お姫様』たちと同じように…
明日がくれば、またいつもの軍の一員。
でも、今だけは…
「君のプレゼントはまだ有効かな?」
貴方の言葉に、私はだまってうなずいた。
いつもの私なら、きっとこんなに素直になれない。
これはさっき飲んだお酒のせい?それともこの服のせい?
どっちでもかまわない…
貴方が私を望むのなら…
だって、私はあなたのものなのだから…