邂逅
「あれ、これ何ですかね?」
フュリーの声に、部屋にいたメンバーはそちらへと眼を向ける。
今日は半年に一度の大掃除。
特に楽しくも無い掃除に飽きてきたメンバーは、手を止めてフュリーの元に集まった。
フュリーがいるのは彼らの上司のデスク前。
難しそうな本やペン立ての隙間にちょこんと座っているそれは…
「クマのぬいぐるみ?」
そこにいたのは、手のひらに乗るくらいの小さなクマのぬいぐるみだった。
ずいぶん古いものなのか、日にあたって色が薄れている。
「誰かのプレゼントじゃねぇの?」
「あの大佐がぬいぐるみって柄か?」
「でも、まさか自分で買ったりしませんよね?」
「ヒューズ中佐の娘さんからとか…」
思い思いの考えを述べる4人の男たち。
しかし、どの意見もイマイチぴったりはまらない。
そんなときだった。
「なんだ、掃除はもう終わったのか?」
噂をすれば何とやら…
入ってきたのは、このデスクの持ち主であるロイ・マスタング大佐と、
「大佐…掃除くらいご自分でなさってはいかがですか?」
彼の優秀な補佐官であるリザ・ホークアイ中尉だった。
「ん?何を見てるんだ?」
部下たちが自分のデスクの周りに集まってなにやら相談していたならば、誰だって気になるところ。
「いえ、これどうしたのかなと思って…」
そういいながら、ハボックが指差す先にあるものは、先ほどのクマのぬいぐるみ。
「あら…」
それに対して反応したのはロイではなく何故かリザだった。
「中尉はご存知なんですか?」
「えぇ、だってそれは…」
「人の持ち物なんかどうだっていいだろ。さっさと掃除を終わらせろ!」
リザの言葉をさえぎるように発言するロイ。
怪しい……
「ちょっと、大佐〜、気になるじゃないですか。何なんですか、これ?」
「うるさい。お前にはまったく関係の無いものだ、ハボック」
あきらかに、不機嫌な様子のロイに、部下たちの興味は募るばかりだ。
「あと1時間で掃除を済ませなかったら、お前ら全員、1週間残業にするぞ。もちろん、残業代など出ないからな」
「「え〜!!!!!」」
「ふんっ、嫌なら無駄話などせずにやればいいだけの話だ。さぼるなよ。行くぞ、中尉」
さぼってるのはあんただろ、と心の中で突っ込みをいれつつ、残業が嫌な4人は掃除に戻ることにした。
「………中尉…いいかげんにやめてくれないか?」
不機嫌な顔で廊下を歩くロイの後には、何故か笑いを必死にこらえているリザがいた。
「失礼しました…でも、あの時のことを思い出すとつい…ふふふっ」
「あれは私の人生で最大の失敗だよ…」
「そのようですね」
リザの笑いはしばらく治まりそうに無い。
まったく…どうして今になってあのことを思い出さなければならないんだ…
そう、あれはまだ私が国家錬金術師になる前の出来事だった……