国家錬金術師



「失礼します」

その声に反応して書類から顔を上げると、そこにはいつも見慣れた副官の顔。

「どうした?」

「大佐、これを」

差し出された紙を受け取り、目を通す。



「なになに……『キングブラッドレイの名において、汝に銘「鷹の目」を授ける』!?」

「はい、先日試験を受けましたので。銀時計もここに…」

ポケットから取り出されたのは、自分の持っているものと同じ、銀時計。

「そういうわけで、今日から私も国家錬金術師となりました。それに伴い、階級もあがります。よって今日からあなたの上司は私となります」

「なっ…そんな…嘘だろ!?!?!?」



「やれやれ、これで無能な上司から有能な上司になったな」

「どこまでもついていきます、ホークアイ准将」

いつの間に現れたのか、リザの後にはハボックやフュリーらの姿が。

「さあ、無能な部下は置いておいていきましょう」

「「イェッサー!!!」」

「まっ、待ってくれ、中尉…いや、准将…じゃなくて、リザ〜」





「…行くな…リザ……待って………」

「大佐?大丈夫ですか、大佐?」

肩を大きくゆすられて、はっと目を覚ました。



「…ここ…は……?」

見回すとそこは仕事場ではなく、自宅のベッドだった。

カーテンの向こうが幾分明るくなっているような気がする。

しかし、起きるにはまだ早すぎる時間。

「……夢…だったのか?」

それにしてはリアルな夢だった。

ふぅっと大きく息を吐く。



「大丈夫ですか、大佐?」

隣から聞こえる声に夢の続きかと驚いてそちらを向くと、心配そうな顔があった。

「あぁ…大丈夫だ…ちょっと悪い夢を見ていた…」

「悪い夢…ですか?」

その顔が曇る。

「いや、あの夢じゃないよ」



今でも時折見る悪夢。

いや、彼らが味わった悪夢と比べると、単なる夢だ。

しかし、終わりはない。



「まだ起きるのには早すぎるな…」

寝ている間に汗をかいたのか、布団から出ている肩が早朝の空気に触れて寒い。

毛布を直して隣にいるリザを抱きしめる。

その暖かさにさっきのことが夢であったとはっきり認識できてきた。



「あのときの夢じゃないとしたら、一体どんな夢をみていたんですか?ずいぶんうなされていましたが」

そういわれて、夢の内容を思い出す。

「いや、くだらない夢だよ…うん…」

「そう言われると余計気になるのですが…」



絶対に言えない…



「もう忘れてしまったよ」

そうは言ったものの、こっちを見ている目が明らかに疑っている。

そんなにうなされていたのか、私は…

確かにある意味恐ろしい夢だったが…



「ほら、もう寝なさい。今日も仕事なんだ」

煮え切らない表情のリザのおでこにキスをして頭を抱き寄せると、程なくして規則正しい寝息が聞こえてきた。

それを聞いているうちに、こちらもまた眠くなってくる。

目覚まし時計がなるまであと3時間。



私は再び夢の世界へと旅立っていった。







おまけ



「大佐、オレ国家錬金術師資格取ったんすけど」

タバコを加えたまま差し出された書類は紛れもなく拝命状。

パッチン

右手の指を鳴らすと同時に燃え上がる紙。

「ふん、お前には必要ない」

「なっ、ひどいっす大佐〜」

「お前など、一生私の下で狗として働くがいい。国家資格どころか、彼女すら必要ではないわ」



「な…やめてください、大佐…彼女欲しい…」

早朝の仮眠室に響くうめき声に起こされたブレダがハボックをたたき起こすのはそう先のことではなかった。