訓練2



「どうだね、中尉?テロの準備は進んでいるかな?」
「ご心配なく。大佐もしっかり対策を練った方がよろしいのではないですか?」
「そうだな…相手は君だからな…」

そう言いつつ、ロイの顔には余裕の表情が浮んでいる。
反対にリザはいつにもまして冷たい表情。

「そうだ、中尉。訓練の翌日は空けておいてくれよ?」
「何故です?」
「だって、負けた方は勝った方のいうことを1日聞くのだろ?」
「勝負はやって見なければ分かりません。もし私たちが勝ったら、貴方の休日などございませんから」



「なぁ…オレたちなんか見られてないか?」
「はい…僕もそう思います……」

食堂で並んで座ったブレダとフュリーは辺りをそっと見回す。

「なぁ、聞いたか?」
「あぁ、もし今度の訓練で軍側が勝ったら、ブレダ少尉たちが1日仕事全部代わってくれるって」
「オレはホークアイ中尉が皆に手料理ご馳走してくれるって聞いたぞ?」
「そうなのか?オレは…」


「……絶対に負けられないな……」
「……そうですね……」

2人はそれ以上おしゃべりをせず、黙々と料理を口に運ぶ。
ただでさえ「質より量」の食堂のランチが、いつもよりも味気なく感じた。



午後、射撃場ではいつものように、練習に励んでいるリザの姿があった。
しかし、いつもと様子が違う。
いつもは下級の兵士達が憧れのまなざしで見つめているのだが、今日はそれがない。
それどころか、リザのボックスの近くには誰も寄り付こうとはしない。
普段「リザちゃん」と気安く話し掛けてくる上官も、今日は目をそらして、知らぬふりである。

こっ…怖い……

いつもとは違う、リザの周りに漂うその鬼気迫る空気に、皆恐れをなして近づけない。



「俺たち…アノ中尉と戦うんだよな…?」
「あぁ…」

そんな兵士達の様子を見て、ハボックは溜息をつく。

やる前から、完全にのまれちまってるよ…
だけど、オレだって中尉と戦いたくなんてないし、命は惜しい……

はぁ……なんでこんなことになってんだか……


ハボックはこの先に大いなる不安を抱いたまま、射撃場を後にした。




「中尉、こちら準備終わりました」
「ありがとう。ブレダ少尉、そっちはどう?」
「こっちももう少しで完了します」

終業後、ここは司令部の隅にある倉庫である。
古くて小さいため、普段はほとんど使われることが無い。

「でも、よくこんなところご存知でしたね、中尉」
「えぇ…脱走した大佐を探しに行く途中に見つけたのよ」

そういえば…
フェリーはずっと思っていた疑問を口に出した。

「どうして中尉は今回の大佐の提案を受けたんですか?」

リザの動きがぴたりと止まった。

それを見たブレダは動きどころか心臓が止まりそうになる。

フェリーのすごいところは、人が聞けないことをピンポイントで無邪気に聞いてしまえることだ。

「別に、深い理由は無いわ。ただ、これ以上あの人を調子に乗せることもないと思っただけよ」

大佐…また何かやったんすか!?!?!?

ブレダの心の叫びはロイに届かないまま、訓練本番は3日後に迫っていた。