長々し夜を




窓からみえる大きな木はもうすっかり葉っぱが散ってしまっている。

外を歩いていると吹き抜けていく風に、いつもはピンと伸ばしている背筋を思わず丸めてしまいそうになる。

もう、季節はすっかり冬になってしまったのだと改めて実感させられる。

しかし部屋の中は先週からつけ始めたストーブのおかげで、快適な暖かさを保っていた。

今年も残すところあとわずか。

毎年この時期にはテロなどの事件が多く、軍部に泊り込んで仕事をすることも少なくない。

そんな中で、今日は奇跡的に何事も無く一日が終わったのだ。

まぁ、「何事も無く」とはいったものの、昼間ロイは仕事をさぼって脱走をくりかえし、リザはその後を追いかけまわしていたのだが。

もはや、それは彼らにとって日常の出来事。

そうやって「追いかけっこ」ができるのは、事件がないからとも言える。



最近、事件続きでなかなかデスクワークの時間がとれず、たまった書類の山は過去最高レベルに達しようとしていた。

そんな山を目の前にして、デスクワーク嫌いのロイが張り切ってサインをするわけが無い。

いつまでたっても仕事をしないロイに、リザは仕方なく奥の手を使った。



「今日中に書類を全て片付けたら、夕飯をご馳走しますよ?」



いつもは食事に誘ってもなかなかOKを出さないリザからのお誘いとあっては、ロイがこの機会を逃すはずが無い。

この効果は抜群で、夕方までには書類の山は綺麗になくなっていた。


「いつもこのくらいスムーズに仕事をしてくださればよろしいのに」

「たまにだから、ありがたみってものがあるんじゃないのかね」

「そんなありがたみはいりませんから」


とはいうものの、やはり仕事が速く片付くのは嬉しいことに違いない。

こうして、二人はこの忙しい時期にも関わらず、就業時間に帰宅することができたのだった。



キッチンからいい香りが漂ってくる。

どうやら今日はシチューらしい。

「もう少し待ってください。あと少しに煮込めばできあがりですから」

リザが湯気の立つカップを二つ持って現れた。


ソファーに座って暖かいお茶を飲む。

それが寒い冬にはたまらない。


「すっかり日が短くなりましたね…」

窓の外を眺めながらリザがつぶやく。

確かに、今日は早めに仕事が終わって帰ってきたはずなのに、外にはすっかり夜の帳がおりている。

「もうすっかり冬だな…」

そういいながら、ロイは手に持った新聞の暦に目をやる。

「12月22日…そうか、今日は冬至か…」


冬至…一年で一番昼が短く夜が長い日。


「あぁ、それで…これだけ寒い日が続くと、春が待ち遠しくなります」

「そうだね…でも、冬も悪くない…」

「あら?」

意外な返事にリザは少し驚いた声をあげた。

いつもは寒いのなんのと盛大に文句を言っているロイの口から「冬も悪くない」という言葉が出てくるとは思わなかったのだ。


「なぜそうお思いに?」

「だって、夜が長いと、それだけ君と一緒にいる時間が長くなるじゃないか」


昼間は上司と部下。

いくら周りが信用の置ける人たちだからといっても、そこはけじめをつけなければならない。

こうして二人になれるのは、圧倒的に夜が多い。


「お言葉ですが、別に夜が長くなったからといって、一日が24時間であることに変わりはありませんし、仕事の時間が短くなるわけじゃないんですよ?」

「まぁ、そうなんだけどね…だけど、君は外が明るいとこうすることも嫌がるだろ?」

そういうと、ロイはリザの唇にキスをした。


「ちょっと、何してるんですか///」

「いいじゃない、もう夜だし…」

「もう……」

にこにこと微笑むロイをみてると何故か怒る気が失せてしまう。


「そろそろ、できたかしら?ご飯にしましょう、大佐」

「あぁ、そうだな。もうお腹ぺこぺこだよ」

頬をピンクに染めてキッチンへと向かうリザの後を、そそくさとロイはついていく。



長い夜は、まだ始まったばかりだ。