抱いて



大佐に夕食に誘われて、結局そのまま大佐の家へ向かうことになった。
もう何度も訪れている場所。
ブラックハヤテ号も慣れた様子で、部屋の隅に置かれた彼専用のクッションに丸くなっている。
昼間にはしゃぎすぎたのだろうか。


シャワーを浴びてくると、先に済ませた大佐はもうベッドに入って、分厚い本を読んでいた。
錬金術関係の本かしら?
大佐は本に夢中になると、周りのことが全く見えなくなることがよくある。
私は邪魔にならないようにそっとドアを閉める。

「あぁ、もう出てきたのか?」
「はい、お邪魔してすみません」
「いや、ちょうど切りがいいから終わろうと思っていたんだ」

伸ばされた手を取ると、彼はぐいっとひっぱる。
それにあわせて、私はベッドへ、そして彼の腕の中へ飛び込む。

「電気、全部消そうか?今日は星が綺麗だよ」

真っ暗になった部屋のカーテンを開けると、そこには今にも降り注ぎそうな満点の星空。
窓から見える四角く切り取られた夜空の右上の方に、真白な川のような星たちが見える。

「これだけ綺麗に晴れているなら、あの2人も逢えただろうな」
「2人って?」
「あぁ、昼間にファルマンが言っていただろ?彦星と織姫」


1年に1度しか逢えない2人…
私がそんな情況に置かれたらどうするのだろう…


「もし、私が彦星と織姫と同じ情況になったらどうするかな?」

大佐の言葉に私はドキッとした。
たった今、私が考えていたことと全く同じだったから。

「多分、耐えられないだろうな…君が側にいないなんて…」

そう言って、優しく触れてくる唇。

私はどうなのだろう…

この人と1年間逢えなくて平気なのだろうか…

私がいないところで、彼がどうなっているかも分からない情況で…

急に不安が押し寄せてきて、私はそれを打ち消すかのようにぎゅっとしがみつく。

そんな私を落ち着かせるためか、大佐は私の髪を梳くようにゆっくり頭を撫でる。

「大丈夫…私は絶対に君を手放したりしない」

その手が下りてきて、私のパジャマのボタンを一つずつはずしていく。
すぐに身に付けていたものは全て取り除かれ、私はベッドに横になった。
大佐も同じ姿になると、私の隣にやってくる。


抱きしめられると心地よい。

触れられるたびに吐息が洩れる。

「あっ…やっ…大佐っ!」

思わず唇から発せられる言葉の甘さに、いつも自分で自分に驚く。

「ねぇ、リザ…今日は1年に1度、願いがかなう日なんだよ?今日くらい、私のお願いをきいてくれないかな?」

私の胸を優しく揉みながら、耳元に囁くように言う。
わずかに届くその息さえ、今の私には媚薬のようなもの…

「んっ、何んですか、大佐…」
「今日だけは…今だけでいいから…名前で呼んで?」
「名前?」
「そう、私の名前…」

そう言いながら、彼の手は下へと降りてきて、私の一番敏感な部分を刺激する。

「やだっ、もう、大佐!!」
「大佐じゃなくて?」


「あっ…ロイっ!」

「よくできました」

星明りの中、ロイが微笑むのが見えた。


「じゃあ、次はリザの番。リザのお願いは?」

ロイが触るたびに聞こえる水音。
ともすれば震えそうになる身体。
これ以上、我慢できない…

今、私が願うことはただ一つ…



「抱いて……」


「仰せのままに」



言葉では「嫌」と言いながら、どこかで期待していた衝撃が訪れる。

我慢できず、目を閉じる。

閉じているはずなのに、瞼の裏に浮ぶ星々。

まるで宇宙の中にいるよう。

ゆっくりと私の中で動く動くロイを感じながら、その宇宙にあるただ一点を目指す。

ひときわ明るく耀くその星。


「ロイっ、もう…ダメ…」


まるで隕石でもぶつかってきたかのような大きな衝撃が全身を貫く。
目の前が真白になった。



白く耀く天の川の両側に隔たれた2つの星。
でも、今日だけは2人は一緒になれる。

それは1年に1度だけ許された逢瀬。

昔の私なら、それでも良かったのかもしれない。

でも、私は知ってしまった。

側にいることの心地よさを。



だから、私は側にいる。

仕事の疲れが出たのか、ロイはいつのまにか隣で寝息をたてている。
けれども、その腕はしっかり私の身体に回されてて、逃れることはできない。

満天の星空の下、暖かい腕の中で目を閉じる。



もしも願いがかなうなら…いつまでも側に…

それがかなえられない願いなら、自分の力で引き寄せるだけ。


だけど1年に1度だけでもいい。
今だけは、この暖かさに甘えさせて…








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